
先週末は、本当は群馬へ来る予定じゃなかった。
連休にも来ていたし、
東京に戻れば、やらなければいけないこともそれなりにある。
それなのに、三日も空けずに、また来てしまった。
でも、やっぱり来てよかったと、心から思った。
この季節の群馬は、本当に気持ちがいい。
寒すぎず、暑すぎず、虫もいない。
湯に浸かっていても心地よいし、
湯からあがって、裸のままただ外気の中に居るだけでも気持ちいい。
こういう条件が揃う日は、
一年の中でも、実はそんなに多くない。
しかもこの日は、
新緑が本当に美しかった。
日に日に濃くなっていく緑が、
水面に映り込んで揺れている。
その景色を見ているだけで、
身体の奥に、新しい力が入ってくるような感覚があった。
来る予定じゃなかったから、
ゲストもイベントもなく、
久しぶりに完全なノープランだった。
朝、パートナーと落ち合って、
「さて、今日はどこへ行こうか」
そんな話をしていた時だった。
ちょうどそのタイミングで、
仲間から連絡が入った。
「今、尻焼に来てます。今日は入れますよ。よかったらどうですか?」
笑ってしまうくらい、絶妙なタイミングだった。
尻焼温泉は、野湯だ。
雨や放流量によって、
温度も透明度も大きく変わる。
冷たくて入れない日もあるし、
逆に放流が少ないと、
お湯が濁ったり、堆積物が溜まってしまうこともある。
しかも結構山奥なので、
「行ってみたけど入れなかった」
なんてことも普通にある。
だから、
実際に今そこに居る人からの情報は、本当にありがたい。
そして実際に行ってみたら、
その日は、最高のコンディションだった。
いつもは少し濁っていることが多いお湯が、
驚くほど透明だった。
少し青みがかった湯に、
お日様の光がきらきら揺れて、
そこに新緑が映り込んでいる。
まるで桃源郷みたいだった。
湯の温度も、外気も、
ちょうどいい。
湯に入っても気持ちいいし、
あがっても気持ちいい。
ぼーっとしているうちに、
時間感覚もなくなっていった。
気づけば三時間くらい入っていたと思う。
「そろそろ上がらないと疲れすぎちゃうかもね」
そう言ってあがったけれど、
たぶん、一日中でも居られた。
ここも今は、
水着で入る人がかなり増えた。
以前ここにあった湯小屋は、
水着NGの、全裸入浴の場所だった。
川のほうも、
「水着着用必須」というより、
「水着でも入れる」という空気だったように思う。
でも湯小屋が取り壊されてから、
水着で入ることが推奨される空気は、
以前より強くなった気がする。
昔から来ている人たちは、
今も普通に裸で入っている。
でも家族連れや女性は、
ほとんどが水着か、足湯だけだ。
女性側の気持ちも、もちろんわかる。
男性もたくさん居る中で、
裸で入るなんて無理、と思うのは、
たぶん、とても普通の感覚だと思う。
男性の視線を、
そこまで気にしない自分のほうが、
少し変わっているのかもしれない。
それでも私は、
大自然の中で裸で湯に浸かる感覚には、
やっぱり特別な美しさがあると思っている。
水着で入るのとは、
まったく違う解放感がある。
風も、
光も、
水の流れも、
身体に直接触れてくる。
ただ、
それはきっと、
身の安全を守ってくれる人たちが居るからこそ、
安心して味わえる感覚でもある。
裸で入りたい人も、
水着で入りたい人も、
それぞれが心地よく居られる空気が、
これからも残っていけばいいなと思う。
尻焼温泉をあとに、万座へ向かう道でも、
「やっぱり来てよかったな」と思った。
尻焼、万座と一日中温泉に入ったあとですら、
「夕方の尻焼も見てみたい」
そう思うくらいに、良い日だった。
絶妙なタイミングで声をかけてくれた仲間にも、
感謝している。
