忙しさの中で少しずつ固まっていく心と身体を、そっとほどいてくれる場所がある。
群馬の温泉へ向かった一日を、静かな記録として残しておきたい。
いく前の揺らぎと、温泉へ向かう決意
今週は家族のこともあって、本当は行く予定じゃなかった。 仕事に没頭しすぎて、寝不足のまま頭だけが冴えてしまう夜が続き、心も身体も少し張りつめていた。
そんなとき、知り合いのカップルさんが来ると聞いて、 「あぁ、やっぱり行きたい」 その気持ちがふっと湧き上がった。
前日には、家族のために何食分もの料理を作り置きして出発の準備。 大変だけれど、この“週に一度の癒し”がないと私はきっと持たない。 そう思いながら、静かに家を出た。
群馬の空気に触れた瞬間、ほどけていくもの
駅で仲間の顔を見た瞬間、 「来てよかった」 心の底からそう思えた。
群馬の凛とした空気を吸い込むと、 またここに戻ってこられた喜びがじんわり広がる。
道の駅では、いつもの山椒とくるみのおにぎりを三つ。 今日はランチの予定があるから揚げパンは我慢。
宿に着くと、そこは雪景色。 外国人観光客の姿もちらほら。 日本の古き良きものを味わえる贅沢さを、改めて感じる。
混浴の湯で感じた、静かな高揚と安心
女性用脱衣所を抜けると、そこは混浴の浴場。 男性たちの視線が一斉に向く。 少したじろぎながらも、奥で待つ仲間のもとへ向かう。
刺さるような視線に、 どきっとする。 嫌ではない。 非日常の高揚が、静かに身体を温めていく。
掛け湯をして、ゆっくりと湯に沈む。 あぁ…至福。 これ以上の至福ってあるのだろうか。
仲間と語り合いながら、最高の泉質に身を委ねる時間。 仲間がさりげなく守ってくれるから、安心して楽しめる。
そっと距離を置く優しさに触れた瞬間
ふと視線の先に、ひとり静かに湯を味わっている男性がいた。 私は初めて見る人だったけれど、仲間は知り合いだったようで、軽く声をかけていた。
けれど、その男性は遠慮するように会釈を返すだけで、こちらの輪には加わらず、静かに湯に身を沈めていた。
おそらく、私が混浴に慣れていない女性だと思ったのだろう。 混浴が初めての人にとって、いきなり複数の男性に囲まれる状況は怖く感じることもある。
その心理を理解しているからこそ、あえて距離を保ってくれたのかもしれない。
知り合いでもない女性に近づきたくて、いきなり輪に入ってこようとする人もいる。 でも、こういう“そっと見守る”男性もいるのだ。
もし、こんなふうに女性の安心を大切にする男性がもっと増えたら、混浴はもっと優しい場所になるのに。 そして、混浴文化が静かに消えていくこともなくなるのに…そんなことを思った。
湯の気配が少しずつ動き出す頃
しばらくすると、別の仲間とカップルさんが到着し、 静かだった浴場がふわっと華やぐ。
湯温がぬるく感じてきたので、熱めの湯へ移動。 肩まで浸かっては温まり、 腰掛けて身体を冷ます…その繰り返し。 永遠に続けられそうな心地よさ。
温泉のあとの一杯と、もうひとつの湯
いつも閉まっていて入れなかった、仲間おすすめのラーメン屋。 今日は開いていた。 岩のりラーメンが絶品で、身体に染み渡る。
その後は、また別の混浴温泉宿へ。 貸切でゆったり。 人目を気にせず入れる温泉は、また違う安心がある。
二つ目の宿で感じた、大人の気遣いと静かな気配
湯から上がってひと息ついた頃、 知り合いのカップルさんとの空気が、いつもと少し違うことに気づいた。 これまでは、ただ湯を共にし、会話を楽しむ仲間としての関係だった。 けれど今回は、仲間の一人が同じ部屋で一晩過ごすことになったらしい。
「もしかして、そういうことなのかな」 そんな気配を感じつつも、仲間本人もはっきりとは聞いていないようだった。 いずれにしても、カップルさんが望むことに応えたい。 でも、こういうことって、雰囲気づくりも難しいし、 仲良くなるほどに、かえって言い出しづらかったりもする。
その空気を察して、 さりげなく“大人の雰囲気”を整えていくもう一人の仲間の自然な気遣いに、 熟練の経験がなせる業だなぁと、わが仲間ながら感心した。
そして私ともう一人の仲間は、3人をそっと残し、 いつもの落ち着ける場所へ向かうことにした。 盛りだくさんの一日だったけれど、 そのひとつひとつが、静かに心に残っていく。
外に出ると、もう日が暮れていた。 冷たい風が、火照った身体にやさしい。
車に乗ると、どっと眠気が押し寄せてきて、 つい、いびきをかいてしまった。
帰り道に残った、静かな余韻
帰りの電車では、心地よい疲れと満たされた静けさに包まれながら、 「やっぱり、この時間があるから一週間頑張れる」 そう思った。
温泉は、ただの癒しじゃなくて、 私が私に戻るための、大切な“帰る場所”。
静かにほどけていく時間を、これからも大切にしていきたい。
この日、実際に訪れた混浴温泉については、別の記事に静かにまとめています。
